今回は、これいい和でも大人気の白河だるまを生み出している、「白河だるま総本舗」の14代目店主 渡邊高章さんにお話を伺いました。

渡邊さんは24歳で家業を継ぎ、有名コンテンツとのコラボだるまを数多く作成、そして福島県白河市に総工費およそ2.5億円の「だるまランド」を2021年7月8日にオープンされ、白河市を観光名所にしたいという思いで日々奮闘されています。

ユーモアあふれる人柄と様々なアイディアで新しいだるまの展開をされている渡邊さん。
今回は、「挑戦」をテーマに現状の伝統工芸や、ご自身のこれまでを語って頂きました。
(インタビューは2021年10月に行いました。)

だるまの成り立ち

白河だるまは、約360年前に白河藩の藩主である、寛政の改革を行った松平定信公が、地域の振興のために何か特産品を、という思いからはじまりました。
だるまの顔には「鶴亀松竹梅」が描かれ、谷文晁(たにぶんちょう)という、今でいうクリエイターの絵師の絵をお手本に作られたと言われています。

焼き肉屋さんで家業を継ぐことを決意!

家業については、どちらかというと「長男が継ぐもの」という田舎の風習もあったのですが、兄が社会人3年目になり、兄弟会議を行ったんです。そこで自分が「家業を継ぎたい」ということを伝えました。今でも忘れない、兄弟二人で焼き肉を食べながら、話した記憶ですね。
そんなに会話することもない中(笑)、兄弟二人で「どうする?」って話をしていましたね。

継ぐことを考えるようになったのは、アメリカの大学に海外留学した時。

「だるまを知っている人いますか?」と聞いてみたんです。
少し手が挙がりましたが、「じゃあ買ったことがある人はいますか?」と聞いた時に、1人、2人くらいしか手が挙がらなかったんですよ。
その当時はまだ家業を継ぐとは決めていなかったんですけど、衰退産業で若い人が買わなくなっているのが事実で、どう若い人に買ってもらうか、手に取ってもらうかということを考えていかなければならないなと感じたんです。

あと、伝統産業というくくりからすると、商売として見るのか、日本・地方の文化として見るのかという話になります。私の考えは、伝統の前にまずは商売として、地域産業として残していくことが大切だなと感じています。
なので、だるまを通して、日本、世界に挑戦していきたいと思っています。
だるま好きを増やす!というのが目的なので、日本の人口1億2000万を越えてだるま好きな人を増やしていきたいです!

七転び八起き!だるまランドオープン

正直な話、前日まで大丈夫かなと内心諦めていました。
建物は立ってしまえばなんとかなったんですけど、中身をそろえるのが大変でした。
スムージーを提供する場所があるんですけど、水道工事の日程が先に決まって、中身や箱すら決まっていない。
そこからなんとか間に合わせて、最終的には10日で商売はできるんだなと学びました(笑)

(写真左)だるま神社 (写真右)福島県産の食材を使ったスムージー

また、ゲーム「だるまさんがころんだ」というタブレットに描いただるまを操作して遊ぶゲームを作りました。これがオープン2日前に納品されて、使い方も分からなかったので現場で検証をしたんです。そしたら、途中でフリーズするというバグが発覚したんです。
オープンしてお客様が遊んでいる時に「止まっちゃいました」では大変だ、ということになり、夜中を通して検証することに。
全員で48時間くらいかけてあの手この手で検証し、何とか間に合わせることができました。
何とかなるんだなということも、学びました!(笑)

行動したことが財産

元々、父親から「海外で通用する人になれ」と教えられていました。
世界に通用する人になってから学校の先生になるものだし、サラリーマンや他の職業になるものだ、という考えだったんです。
「一つの世界しか知らないのに、物事を判断するな」

白河から上京していった時も、唯一言われた教えでしたね。
日本だけじゃなくて世界の人や色んな人と会話して学んだことと、自分のやりたいことの方向性を考えたときに、最終的に家業を継ぐことの判断にいきつきました。
ある時、学生時代に交流会で出逢った社長さんに自分の価値はいくらだと思う?と聞かれました。
当時はバイトもしていなかったし、0円かなあ?、いやサラリーマンの生涯賃金2~3億くらいかなあと考えたのですが、将来を考えて「100億」と答えました。
そうしたら、「100億稼ぐ人がどういう生活をしている人かわかる?」と言われてしまい、ああなるほどなぁ・・・と思いました。
稼げる人がどういう日々の過ごし方や、考え方を持っているか、そういったことを考えていくことが必要なんだということを、そこで教えてもらいました。

だるまを挑戦する人への後押しに


「だるまって何なのか」と考えると、だるまは挑戦する心を形にした物だと思うんです。
合格したい、結婚したい、旅行に行きたい、大小さまざま、その人がやりたいことってあると思うんです。その目標に向けて目を入れ、叶ったときに目を入れる、そういった挑戦する人への後押しになるものだと思っています。

「だるまさんがころんだ」や、「にらめっこしましょ」といった遊びや絵本など、意外とだるまは身近なところにある。だからこそ、「だるま」というものをもっと身近に捉えてほしい。多店舗の展開をもっと増やしていきたいですね。
「だるまってどこで買うの?」ということを、意外と言われるわけですね。
だから、もっと身近にだるまを捉えてもらうためにも、購入できる場所や触れる機会を増やしたい。目指すは日本の裏側のブラジルからだるまを買いに来ました、という人を作りたいですね!

今回お話を伺い、印象的だったのは「伝統」の前に「商売」であるということ。
工芸品は国から保護をされているものも多くありますが、そこに頼るのではなく、より身近な存在としてだるまを広めていきたいという渡邊さんの思いが伝わってきました。
「七転び八起きのだるまを体現しています」と話されるほど、どんな小さなことでも目標をもって挑戦していく渡邊さんの姿は、まさに七転び八起きのだるまそのもの。
今後の展開も楽しみですね!

だるまランド公式サイト
https://darumaland.jp/