こんにちは、これいい和のいきものがかりです。

日々あわただしい中でも、暮らしの道具を長く、ていねいに使いながら、1日1日を過ごしていきたい・・・そんなことを、ふと思っています。

さて、今回のテーマは「民芸品と工芸品について」。

1文字違うけど、何か違うのか??なにげない違いですが、こちらの言葉に着目してみたいと思います。

目次
1|民芸品について
2|工芸品について
3|まとめ

1|民芸品について

民芸品とは、柳宗悦(やなぎむねよし)らによって提唱された造語。彼の「民芸運動」の中心的なコンセプトでした。柳宗悦は、19世紀末から20世紀初頭の日本における急速な近代化の中で、伝統的な工芸技術や文化が失われつつあることに危機感を抱きました。そして彼は、大量生産や機械製造によって作られる均一な製品に対して、伝統的な技術や素材、美意識を取り戻す必要性を主張しました。

そして柳宗悦は、「民衆の中の芸術家」というアイデアを提唱します。一般の人々が日常の中で手作りできる、美しい工芸品を作り出せるという考え方です。

柳宗悦の説く「民芸品」とは具体的にどんなものか。彼は、そこに見られる特性を次のように説明しています。

実用性。鑑賞するためにつくられたものではなく、なんらかの実用性を供えたものである。
無銘性。特別な作家ではなく、無名の職人によってつくられたものである。
複数性。民衆の要求に応えるために、数多くつくられたものである。
廉価性。誰もが買い求められる程に値段が安いものである。
労働性。くり返しの激しい労働によって得られる熟練した技術をともなうものである。
地方性。それぞれの地域の暮らしに根ざした独自の色や形など、地方色が豊かである。
分業性。数を多くつくるため、複数の人間による共同作業が必要である。
伝統性。伝統という先人たちの技や知識の積み重ねによって守られている。
他力性。個人の力というより、風土や自然の恵み、そして伝統の力など、目に見えない大きな力によって支えられているものである。
また、そこに宿る民藝美の内容を、柳は「無心の美」、「自然の美」、「健康の美」であると説明している。(日本民藝協会HPより)


彼は、農村や田舎に伝わる伝統的な技術や素材を活かし、地域の個性や風土を反映させた作品を作り上げることを目指しました。このような作品は、その土地や文化の特徴を象徴するものとされ、一般的に「民芸品」と呼ばれました。

長く、日本で暮らす人々の生活を支えてきた、日本各地のものづくりに関して、このように分析し、「民衆生活の中にある芸術なのだ!」と主張する柳宗悦の考えは、いまの日本のモノづくり・伝統産業にも大きな影響を与えています。

ちなみに、キッチンツールでも有名なインダストリアルデザイナーの柳 宗理は、柳宗悦の長男です。

2|工芸品について

一方、工芸品は、伝統的な技術や技法を用いて作られる美術品や装飾品のことを指します。素材や技術、デザインの高度な品質を重視し、芸術性や美意識を追求します。また、個々の職人や作家によって制作される場合があります。一つ一つの作品に独自の特徴があり、美術館などで展示され、高い評価を受けることもあります。


特に、「伝統的工芸品」となると、経済産業大臣は「伝統的工芸品」として、以下の5つの要件に該当する工芸品を指定します。

主として日常生活の用に供されるものであること。
その製造過程の主要部分が手工業的であること。
伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
(経済産業省HPより)


「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」によって、生産方法や産地等、細かく定められることになります。この法律は、伝統的な工芸品の技術や技法、デザイン、素材の継承や普及を支援し、地域や作家の活動を支える仕組みを整備しています。さらに、工芸品の品質管理や販路開拓、教育・研修の支援など、多角的な取り組みも行われています。細かな決まりもある一方、その工芸品の保護と普及をはかろうとしているものです。


ざっくりした言い方になりますが、民芸品は、地域の伝統や文化を大切にしながら、一般の人々が手軽に作り出せるものであり、地域の特産品や土産物として親しまれてきたもの。一方、工芸品は、高い技術や芸術的な要素を持ちながら、独自性やクオリティに重点を置いて制作され、地域の特産品・土産物として重要な役割を果たしているもの、と言えます。
民芸品であり、伝統的工芸品でもあるモノもあるわけです。

3|まとめ

このように、民芸品と工芸品は、日本の伝統的な美術や工芸の重要な要素であり、それぞれ独自の特徴や目的を持っているということが伝わりましたでしょうか。いずれにせよ、日本の生活の道具、手工芸品について考える上で、大切なエッセンスかと思います。よいものを長く使い、それを生み出した職人さん、さらにはその土地の風土まで考えを馳せながらすごしてみて、毎日の生活を、さらに豊かなものにしていきたいですね。

参考:日本民藝協会HP
   経済産業省HP