2022.12.22 よみもの
陶器の「目止め」とは?初めてでも簡単!お米のとぎ汁でできるお手入れ方法

こんにちは、これいい和です。
お気に入りのうつわを、長くきれいに使いたい——
そんな方にぜひ知ってほしいのが「目止め(めどめ)」というお手入れです。目止めとは、陶器を汚れにくくし、ひび割れやシミを防ぐための大切なひと手間。お米のとぎ汁を使えば、初めてでも簡単にできます。
使い始めに少しの手間をかけることで、陶器が長持ち。
それに加えて、自分だけのうつわを育てるような喜びを感じられるはず。
この記事では、目止めのやり方や、目止めが必要なうつわの見分け方、長く使うコツをわかりやすく紹介します。
もくじ
1|目止めとは?陶器を長く使うための下準備
2|なぜ目止めが必要なの?陶器の特徴と理由
3|簡単!お米のとぎ汁でできる目止めのやり方
4|どんなうつわに目止めが必要?陶器と磁器の違い
5|お手入れで増す、うつわの魅力
6|目止めを楽しむおすすめ陶器
7|関連リンク
1|目止めとは?陶器を長く使うための下準備
「目止め(めどめ)」とは、陶器の表面にある目に見えない小さな穴をふさぎ、汚れやシミの染み込みを防ぐためのお手入れ方法です。
陶器は自然の土で作られていることにより、やさしい風合いが特徴です。一方では吸水性が高く、そのまま使うと料理の汁気や油分を吸ってしまうことがあります。
目止めを行うことで、表面がなめらかに整い、においや汚れを防ぎながら、美しい状態を長く保つことができます。
また、目止めをすることで、うつわが割れにくくなるという効果もあります。
お気に入りの器を末永く楽しむための“最初のひと手間”として、目止めはとても大切な工程です。
2|なぜ目止めが必要なの? 陶器の特徴と理由

陶器は、「土」を原料としています。そのため、表面に目には見えない小さな穴がたくさんできます。石を粉末化したものを原料とした、ガラス質の多い磁器とは異なり、陶器は粒子が粗い「土」。土からできる多孔質(たこうしつ)という性質により、陶器は吸水性があり、水分や油分、料理の色や香りを吸い込みやすくなります。
目止めをせずに使うことで、経年変化をお楽しみいただけるという見方もできます。
その一方で、汚れやシミ、においがつく原因になり、長く使ううちにひび割れや変色が起こることもあります。吸水性の高さを抑え、うつわの美しさと強度を保つために行うのが「目止め」です。
目止めは、お米のとぎ汁に含まれるでんぷん質が陶器の小さな穴をふさぎ、汚れや水分の浸透を防ぎます。
さらに、吸水による膨張・収縮を抑えることで、うつわの割れや欠けを防ぐ効果もあります。 見た目の美しさを保つだけでなく、長く愛用するための、ひと手間。
手をかけるほどに、自分だけのうつわへの愛着が深まっていくのを感じます。
3|簡単!お米のとぎ汁でできる目止めのやり方
「目止め」は特別な道具も必要なく、家にあるもので簡単にできます。
使うのは「お米のとぎ汁」と、うつわがすっぽり入る大きさの「鍋」だけ。とぎ汁に含まれるでんぷん質が陶器の小さな穴をふさぎ、汚れやにおいの染み込みを防いでくれます。
【手順】
① うつわを軽く洗う
購入したばかりのうつわをさっと洗い、表面のホコリや汚れを落とします。
② 鍋にとぎ汁とうつわを入れる
お鍋にうつわを入れ、うつわ全体が隠れるくらいの量のお米のとぎ汁を注ぎます。
③ 弱火でゆっくり煮る(約20分)
弱火でじっくり火を入れていきます。沸騰してからは沸き立たないように気を付けながら、約20分。とぎ汁が温まることででんぷん質が浸透し、うつわの表面を自然にコーティングしていきます。
④ 火を止めて冷ます → 水洗いする → よく乾かす
火を止めたらそのまま自然に冷まし、うつわを取り出して水洗い。
しっかりと乾燥させたら「目止め」は完了です!
一度行っておくだけで、使い始めの陶器がぐんと丈夫になり、料理の色や香りが染みにくくなります。お気に入りのうつわを長く楽しむための、大切な最初のステップです。
【ポイント】
・お米のとぎ汁は、2回目位の濃い目のものを使うと◎
・とぎ汁の代わりに、残ったご飯や、片栗粉で代用も◎
・沸き立つように沸騰させると、うつわが割れてしまうためご注意ください。底にきれいな布巾を敷くと◎
・器を伏せず、上向きに入れてください。生じた気泡により器が不安定になってしまう可能性があります。
・煮沸が難しい大皿や鉢、丼などは、温めたとぎ汁とともに袋などに入れて一日置くだけでも効果があります。
・土鍋などは、おかゆを煮込むことでも効果的です。
【丁寧に行うときのコツ】
・お米のとぎ汁に入れて火にかける前に、うつわを真水に1時間程度つけておくと◎
・冷めてから水分を拭き取ったあとに、風通しの良い日陰で一晩以上乾かします。
4|どんなうつわに「目止め」が必要?
陶器と磁器の違い
すべてのうつわに「目止め」が必要なわけではありません。まずは、購入時に添付文書があれば、目止めが必要かどうか確認しましょう。
もし記載がなければ、ご自身のうつわが 「陶器」なのか「磁器」なのか を見分けてみましょう。

<陶器>
陶器は「土」から作られ、温かみのある質感が特徴です。透光性はありません。
目には見えませんが、表面に小さな穴が無数にあり、そこから水分や油分が染み込みやすくなります。
そのため、陶器には目止めをしておくと汚れが付きにくく、長くきれいに保つことができます。
陶器には、表面に釉薬をかけた「施釉陶器」と、釉薬をかけず表面がざらざらした土の質感が残る「焼き締め陶器」があります。
※釉薬(ゆうやく)がかかっている施釉陶器の場合
陶器でも、釉薬でしっかりコーティングされている場合は目止めをしなくても、基本的には大丈夫です。ただし、表面に「貫入(かんにゅう)」という細かなヒビ模様があるうつわは、貫入の隙間から染み込みが起こることもあるため、目止めをしておくと安心です。

<磁器>
磁器は粉末状に砕いた「石」から作られています。一般的に陶器よりも焼成温度が高いため、表面がガラス質に近く、吸水性がほとんどありません。ツルツルとした手触りで、透光性があり、透けるように白いのが特徴。そのため、基本的には目止めの必要はありません。

以上をまとめると、目止めが必要な器は「陶器」。
特に釉薬がかかっていない「焼き締め陶器」や、「貫入のある陶器」は目止めを行うことがおすすめです。
5|お手入れで増す、うつわの魅力
目止めをしたあとの、陶器を長持ちさせる日常のお手入れについてもご紹介します。
【日常のお手入れ】
・使用する前には、たっぷりの水に浸して吸水させます。
・料理を長時間のせたままにすることはなるべく避け、料理を保存する場合は専用の容器に移します。
・使用後すぐ、柔らかいスポンジで汚れを落とします。
・洗った後は、棚や引き出しにしまう前によく乾燥させます。
・急激な温度変化は避けてお使いください。
・シミやにおいが気になる場合は、重曹や粗塩でこするようにして洗ってください。
6|目止めを楽しむおすすめ陶器
せっかく「目止め」やお手入れ方法を知ったなら、実際に手入れをしながら育てていける陶器を使ってみませんか。
目止めが特に効果を発揮するのは、釉薬を使わない 焼き締め陶器 や、土の質感を生かした 素朴な風合いのうつわ たち。
たとえば、石川県の「珠洲焼」。
珠洲焼は、灰が自然に溶けてガラス質の膜をつくる独特の技法で生まれる黒灰色が魅力。長く使うことで表面がなめらかになり、使い手ごとに異なる艶やかな表情へと変化していきます。
このような焼き締め陶器は、まさに「目止め」によって土味の深みをじっくりと育てられる一品です。
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また、益子焼や萩焼のような陶器でも、うつわによっては釉薬の下に小さな貫入(ひび模様)があります。そこにお米のとぎ汁が入り込むことで、模様の色合いや艶の変化をやわらかくします。「うつわを育てる時間」の一歩として、目止めの時間をお楽しみください。
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お気に入りの陶器にひと手間かけることで、使うたびに愛着が増していく。そんな「育てるうつわ」のある暮らしを、今日からはじめてみませんか。
7|関連リンク
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